エネルギー総合政策・7つの提言 平成13年4月12日
自由民主党・政務調査会
石油等資源・エネルギー対策調査会
エネルギー総合政策小委員会
はじめに
近年の景気の低迷に加え、産業部門のエネルギー利用の効率化や、石油から天然ガス・原子力への燃料転換の成果もあって、わが国のエネルギー需給は、表面的には小康を保っている。
しかし、民生部門・輸送部門におけるエネルギー需要の伸び、東アジアを始めとする発展途上国の石油需要の急増、依然として高水準を示すわが国エネルギーのペルシャ湾岸依存度、更にはもんじゅのナトリウム漏れ事故に続くJCO臨界事故、BNFLのMOX燃料データ改ざんなど、原子力開発に関する事件・事故が重なり、エネルギー脆弱性の克服・環境保全と両立するエネルギー政策上の課題が生じているのも事実である。
また、昨年来顕在化した米国ルイジアナにおける天然ガス価格の急騰やカリフォルニア州の電力危機は、公益性の高い分野における制度改革の難しさを浮き彫りにした。
これまで我が党は、石油の安定維持、規制緩和、省エネ・代エネの推進、原子力安全規制・防災対策など、個々のテーマに対して適切に対処してきたが、最近の情勢変化を踏まえ、エネルギーに関する中長期的な総合政策を討議することが必要との認識に至り、平成12年3月31日に当委員会が設置された。その後、小委員会は、学識経験者・行政等からのヒアリングも含め29回にわたる討議を行い3回の中間報告を経て、ここに「エネルギー総合政策7つの提言」を取りまとめた。今後、さらに必要に応じて、調査研究を継続する。
7つの提言
1.エネルギー政策の視点
エネルギー政策は、短期のみならず長期的、個別対応のみならず総合的な視点に立ち、情緒的・硬直的でなく科学的かつ柔軟な発想で取り組む必要がある。
2.政策の基本
エネルギー政策は、エネルギーの安全保障と供給信頼性、ならびに環境適合性を基本として、需給両面にわたり推進する。市場原理を活用した経済構造改革は、これらとの調和を前提とし、消費者満足や国民的利益の観点から推進する。
特に公益性の高い分野での制度改革は、国内外の成果と失敗例を踏まえ、適切に対処する。
3.需要の効率化と環境適合化
需要対策が重要である。気候変動防止などの環境保全やエネルギーの安全保障を考えるとき、「需要はどうなるか」から「需要をどうするか」に発想を転換することが必要である。効率的で、地域環境・地球環境に適合する需要構造の構
築を長期的視点で推進すべきである。特に、エネルギー消費、二酸化炭素排出の増加が著しい「業務」「家庭」「乗用車」部門に対策の重点をおく。
(具体策の例示)
・ 住宅・ビルの断熱性能向上、排熱の回収利用、蓄熱、コージェネ。
・ 建築物および自動車の取得・保有に関するグリーン税制の導入・拡大。
・ 自動車燃費の改善、環境適合型自動車の技術開発。
・ 交通管制システムの改善、立体交差の促進等による渋滞の解消。
・ 陸、海、空を含めた最適交通システムの追求。
・ 排ガス減少対策など、地域環境改善策の推進。
・ エネルギー機器効率向上のためのトップランナー方式の推進。
・ 燃料電池利用の研究開発。
・ 「過剰から簡素へ」「使い捨てからリサイクルへ」ライフスタイルの変革。
4.経済的措置
環境税・炭素税等のエネルギー関連税制を設けることや、排出量取引制度の創出などの経済的措置が提案されている。これは、市場に価格シグナルを送り、これにより個人や企業が自主的な選択や行動をとることを通じて、エネルギー
需給構造の変革を誘導し、これによって環境負荷を軽減するものであり、検討の価値がある。
ただし、その導入に先立って、海外の事例の十分な調査、先進国等との協調、および既存の複雑なエネルギー税制の抜本的見直しを行うことが不可欠である。
5.化石燃料の効率的利用
化石燃料は、現在、わが国の一次エネルギーの81%(うち52%が石油)を占め、中期的にはなお主力であり続ける。途上国の需要増と環境問題に配慮して、化石燃料比率の低減と効率的かつクリーンな活用が重要である。
石油は貴重なエネルギー源である。わが国はほぼ全量輸入であり、その75%はペルシャ湾岸諸国からであり、この結果、一次エネルギーのペルシャ湾岸依存度は約40%(米国は4%)と極めて脆弱である。
このため、エネルギー安全保障の観点から、石油依存度の計画的引下げを計画的に推進するとともに、輸入先の多角化、備蓄の強化、資源国との上流部門での開発協力に努める必要がある。また、石油から非石油への燃料転換は、これ
まで発電部門では大幅に、その他の工業加熱や暖房用ではある程度進んだが、輸送用(自動車等)ではほぼ全量石油製品のままである。輸送分野での燃料転換が今後の課題である。
天然ガスは、化石燃料の中では、環境負荷がもっとも小さく、今後期待されるエネルギーである。極東ロシアのガス田開発、天然ガスパイプライン構想、メタンハイドレードの開発可能性など、多くの提案や構想もある。発電用燃料の構成や燃料電池の普及可能性など、需要面の動向を十分に調査し、経済評価を行った上、対策を講ずることが必要である。
(具体策の例示)
・ 需要面での省エネルギー対策(前記)。
・ 自動車用燃料の非石油系への転換。
・ 供給面での天然ガスへの燃料転換、原子力の拡大、再生エネルギーの積極的活用。
・ GTL(ガス・ツー・リキッド)の研究開発。
・ 天然ガスパイプラインの可能性評価。
・ 石油備蓄体制の強化。
・ LPGの安定確保。
6.新エネルギーの育成強化
太陽光・風力などの新エネルギーは、これからのエネルギー供給源として、多方面から期待を集めている。わが国は、新エネルギー促進のための政府補助金と電力会社の自主的な高値引取りもあって急速に普及している。その結果、太
陽光では世界第一位の出力(現在、約20万kW)を示している。また、EUで「再生エネルギー」の開発・導入目標を定めるなどの動きもある。
しかし、他エネルギーと同様、光(非化石、環境適合、需給直結、クリーンなイメージ)と陰(薄い密度、出力不安定、高コスト)があり、その両面を冷静に評価して活用していく必要がある。現状は課題が多いこと
も否定できないが、国民の期待にできるだけ応え、わが国のエネルギー政策の中に適切に位置づけ、エネルギー分野の自由化との整合性を図りつつ、法制面等の整備についても検討する。
(具体的政策や課題の例示)
・ 平成9年に成立した新エネ促進法の運用強化等による建設費補助の充実。
・ 「新エネルギー」の定義の見直し。
・ 市民・企業の自主的参加による「グリーン電力基金(昨年10月スタート)」促進のための税制措置。
・ エネルギー戦略達成のための目標を設定する場合の「ポートフォリオ基準」のあり方。
・ 上記の場合、「グリーン証書」発行の可否。
・ わが国では注目度が低いが、欧州の再生エネルギーでは主力と目されるバイオマスエネルギーの利用可能性と活用方策。
・ 究極の太陽光利用としての「太陽光宇宙発電(SPS)」等新規テーマの研究開発。
・ 水素エネルギーシステムの研究
7.原子力発電・原子燃料サイクルの着実な推進
原子力発電は、現在、発電電力量の37%(一次エネルギーの14%)を占めており、化石燃料依存度の低減、温室効果ガス排出の削減、エネルギー安全保障の観点から安全管理に万全を期しつつ、着実に推進する。JCO事故は、特殊な燃料を違法に加工した工場で生じた臨界事故であるが、これを例外とせず、原子燃料サイクルを一貫した安全管理、防災対策の強化を図る。
また、立地地域の振興に配慮する。この方針の下に、この一年余の間に
・ 安全審査指針の見直し、強化
・ 安全管理体制の改善(原子炉等規制法の改正を実施)
・ 原子力防災体制の強化(原子力災害対策特別措置法の制定を実施)
・ 立地地域の振興方策(原子力発電施設等立地地域振興特別措置法を制定実施)を行ってきた。今後とも、光(エネルギー安全保障・環境適合性・長期経済性)と陰(潜在的危険性・高レベル放射性廃棄物処分問題・短期的投資リスク)の両面を冷静に評価し、リスクをコントロールしつつ、国策として着実に推進する。
原子燃料サイクルについては、エネルギー自立の観点を基本としつつ、国際的なウラン需給の動向、サイクル関連技術開発と、コストの国際比較等を勘案しながら、これを推進する。
プルサーマルについては、ウラン資源の有効活用を図る技術であると共に、燃料供給の安定性向上の観点から、また、核不拡散の観点から、国策としてこれを推進する。
FBR(高速増殖炉)の開発は、商業化が急務ではなくなった。このことは、十分な研究開発の時間が得られたことともなり、長期的には世界が必要とする可能性のあるFBR技術を、日本がトップランナーとして研究開発することを可能にした。現在停止中の「もんじゅ」(原型炉)の安全審査を早急にスタートし、一定期間運転後、データの蓄積と解析により、将来の炉型戦略を考えることを検討すべきである。
高レベル放射性廃棄物の処分事業に関する法律が、制定・実施され、
・ 高レベル放射性廃棄物の処分主体の決定
・ 処分費用の現世代からの積立て
・ 処分事業の進め方――処分地選定のプロセス
が明確化されることになった。今後は、この法に沿って事業を着実に進めることとする。現世代のツケを次世代に廻してはならない。
(今後の検討課題)
・自由化の進展によっては、需要の見通しが不透明となり、リードタイムが長く、投資規模が巨大で、初期資本コストの高い原子力発電は、投資リスクが大きいため、その選択を企業が逡巡するおそれがある。国策としての推進との調和をどのように図るか。
・需要地立地や途上国向け輸出戦略としての静的安全・核不拡散耐性をもつ小型炉の研究開発。
・ 人工島立地方式の展開と多目的利用の検討。
・ 欧州等海外の取組み意欲と姿勢を十分検討した上での、ITERの誘致可否の判断。
むすび
上記の‘7つの提言’を実現するための第一歩として、別添の「エネルギー政策基本法(仮称)」案を提案する。
なお、提言の中に記した具体策や検討事項については、今後も引き続き調査研究する。
以 上
*太陽光や風力は、政府の「政策加速ケース」によっても、一次エネルギー総供給に占める割合は、2010年にそれぞれ0.2%、0.02%に過ぎない。風力を政府見通しの10倍(300万kW)としても0.2%にとどまる。
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