活動内容



2000年8月の活動

<石油等資源・エネルギー対策調査会 
  エネルギー総合政策小委員会
  (甘利明委員長・加納時男事務局長)の『第二回中間報告』>
                        (PDF版12

  2000年8月9日
  自由民主党・政務調査会
  石油等資源・エネルギー対策調査会
  エネルギー総合政策小委員会


 これまで我が党は、石油の安定維持、規制緩和、省エネルギー・代エネルギーの推進、原子力安全規制・防災対策など、個々のテーマに対して適切に対処してきたが、最近の情勢変化を踏まえ、エネルギーに関する中長期的な総合政策を討議することが必要との認識に至り、2000年3月31日に「エネルギー総合政策小委員会」が設置された。

小委員会は学識経験者等からのヒアリングも含め7回にわたる討議を行い、5月24日、第1回中間報告をとりまとめた。その際、「今後の検討課題」として、

  1. 異なる政策目標間の調整メカニズムをどのように考えるか。
  2. エネルギー諸税の見直し等経済措置をどう考えるか
  3. 新エネルギーを補完エネルギーとして推進強化する具体策
  4. エネルギー政策の決定システム

を明記したが、今回、7月31日から本日まで計6回、有識者等の意見を拝聴しながら議論を重ね、以下の二点につき、ここに取りまとめを行った。

 ◆環境税・炭素税等を導入する場合は、十分検討の上で行うこと
 ◆新エネルギーの評価とその推進策

今後も、残された課題を含め、広く調査研究を継続する。




環境税・炭素税等を導入する場合は、十分検討の上で行うこと


 環境税・炭素税等といったエネルギー関連税制を課すことによって、エネルギー需給構造の変革を誘導し、これによって環境負荷を軽減するシステムが提案されている。

 導入に積極的な意見の根拠としては、次の論点があげられている。

・ 政策目的(地球温暖化防止)と負担との関係が明確。環境に負荷を与えている人は、その度合に応じてコストを負担すべき。消費者に対するアナウンスメント効果あり。
・ 炭素を沢山放出する発電方式に対して、外部コストを内部化させ、それによって、自然エネルギー・原子力等の非化石エネルギーとのイコール・フィッティングを図ることができる。
・ 政府の直接規制に比べて効果的。市場に「価格」シグナルを送り、これにより、個人や企業が自主的・創造的な選択・行動を起こすことができる。
・ 欧州で数ヶ国が導入している。日本も導入して環境先進国としてのリーダーシップを果たすべき。
・ 産業部門は、課税分を価格に転嫁すれば負担はない。
・ 国際競争力に影響のある製造業については、税率の軽減または免除、国境調整(輸入品に課税または輸出品の戻し税)を行えばよい。
・ 税収は、エネルギー対策・福祉対策等に使う。その財源が得られる。
・ 影響が懸念されるならば、低率でスタートすればよい。
・ 「炭素排出の低減」と「福祉等の財源確保」の「二重の配当」がある。

導入に慎重な意見は、次のようなものである。

・ 価格効果があるのは産業部門。激しい内外競争下で、新たな課税分を安易に価格転嫁できず、経営が困難になるか、非課税国への生産シフトが生ずる。
・ 肝心の民生部門・輸送部門には価格効果があるのかが疑問。2回の石油危機後も、両部門のエネルギー消費は増え続けた。
・ 欧州では、一般財源として利用しているところが多い。既に消費税等が20%程度の高水準となっていて、福祉等のための財源を確保するための税収対策としての意味合いもあるのではないか。
・ 欧州では、課税対象から「原料コークス」「原料ナフサ」を除外したり、エネルギー多消費産業には減免をしている例が多い。これは「炭素」を実効的に減らすよりも、「税収増」を意図しているものであり、「炭素税」の実体は乏しい。
・ 介護、年金、福祉等の財源が必要なことはわかる。が、それならば「環境税・炭素税」ではなく「消費税」の方が馴染むのではないか。
・ 国境税調整は技術的には困難。やはり実施するならば、世界同時実施が必要。アメリカではBtu税(エネルギー税)が世論の猛反対を受けた。また、発展途上国、特に石炭依存度の高い中国に近接するわが国と、相互に近接して地球温暖化防止に共通の関心を持つ欧州とは事情が異なる。
・ 石油をはじめ、エネルギーについては、税制が複雑かつ税負担が重い。既存の税制の見直しが先決。(ex.ガソリン税・関税・石油税・揮発油税・道路税・消費税)自動車の場合、自動車の取得、保有段階を含め9兆円にのぼり、世界の水準と比較しても異常に高い。
・ 税率を低くすれば効果は乏しく、税率を高くすれば影響が出る。
・ 個人消費を押し倒し、景気回復に水をさす。

これらの双方の意見を踏まえ、環境税・炭素税等といったエネルギー関連税制を導入する場合は、以下のような点に留意しつつ、経済的措置の一つとして、必要性、CO2排出抑制効果等を含め、十分な検討の上で行うべきである。


1. 「環境に負荷をかける活動を行うものに対し、適切かつ公平な経済的負担を課す構想」は環境基本法22条に定めるところであり、気候変動防止対策として、エネルギー起源のCO2削減を促進する制度の1つとしての、環境税・炭素税等といったエネルギー関連税制は検討に値する。但し、実施の前に十分な条件整備を図ることが不可欠。


2. 実施に際しては
・ 米国を含む先進国およびNIESとの連携など産業の国際競争力への配慮が不可欠。さもないと安易に非課税地域に生産がシフトし、地球レベルでは効果ないばかりか、CO2排出増もありうる。

・炭素の排出率に応じて、各エネルギーに課税することも一案。
・ CO2排出増加の続く民生・輸送部門に重点を置くべきであるが、産業部門も課税対象とすることを検討する(『産業部門は、スタートした経団連の「自主的行動計画」の成果を見守り、当分の間課税しないが、一定期間後に効果が現れなければ課税対象とすべき』『ピーク時電力需要の抑制等、民生部門対策の促進』という意見もあった)。
・ 税収の使途は「エネルギー対策」に限定した「目的税」とし、一般財源とはしない。例えば、気候変動防止対策としては、省エネルギーの推進、非化石エネルギーの開発・拡大、代替フロンの回収、排出権取引の運営等が考えられる。


3. 実施に先立って
・海外の事例の十分な調査
・ 「税のグリーン化」の観点も踏まえ、既存のエネルギー関連税制の抜本的見直し
を行うことが必要である。




-------新エネルギーの評価とその推進策-----------


太陽光・風力などの新エネルギーは、これからのエネルギー供給源として、多方面から期待を集めている。わが国は、新エネルギー促進のための政府補助金 と電力会社の自主的な高値引取りもあって急速に普及している 。その結果、太陽光では世界第一位の出力(1998年度末で13.3万kW)を示している。また、EUで「再生エネルギー」の開発・導入目標を定めるなどの動きもある。

しかし、他エネルギーと同様、光と陰があり、その両面を冷静に評価して活用していく必要がある。現状は人気先行、過剰な社会的期待、実力不足であることは否定できない。しかしながら、国民の期待に出来るだけ応え、わが国のエネルギー政策の中に、適切に位置づける必要もある。


(1)新エネルギーの長所(光)

新エネルギーには、次のような長所があり、この面のみに着目すれば理想的とも言えよう。

・ 非化石エネルギーであること。従って、発電段階では、CO2を一切排出しないクリーンなエネルギーである(ライフ・サイクル・アセスメント評価 では、勿論CO2を排出するが、化石燃料と比べると、その排出率は1月15日〜1月20日であり、原子力と共に極めて小さい)。
・ 需給直結であること(他の大型電源と異なり、地域分散型の電源であり、需要と供給とが同一地点であることから、地域の自主性・満足度が高い)。
・ 非枯渇性であること。欧米では「新エネルギー」と言わずに、「再生可能(renewable)エネルギー」と呼ぶ由縁である。


(2)新エネルギーの短所(陰)

一方、新エネルギーには、次のような短所があることも事実である。
・ 量的にはエネルギー供給の主力となるほどの力を期待することは極めて難しく、補完的な役割にとどまる。
――太陽光発電の場合、エネルギー変換(光→電気)効率は10%台であり、さらに設備利用率(自然条件により決まる)は、12〜13%程度であるため、技術開発により変換効率を10%台の上方(19%)まで改善しても、トータル効率は2%程度。
――密度の薄い不安定なエネルギー。現在の政府の「政策加速ケース」で、急速に太陽光を普及させた場合、2010年度には、500万kWを目標としているが、それでも一次エネルギーに占める比率は0.2%に過ぎない。課題は、質的には、昼夜・日照時間・気象条件により、変動が大きいこと。価格(コスト)は技術開発と量産化によって低下したが、それでもなお競合するエネルギーに比べて数倍から数十倍と高い。
――風力の場合、製造技術の急速な進歩により、風況の良いところでは利用促進が始まっている。政府の「政策加速ケース」では、2010年には30万kW(一次エネルギー比0.02%)を目標としているが、実勢はこれを上回ることが確実視されている。が、仮に政府目標の10倍(300万kW)に拡充しても、一次エネルギー比0.2%に過ぎないことも事実である。尚、風力には騒音・出力変動・鳥害・景観への影響等、「陰」の部分があることにも留意したい。


(3)市民・企業の自主的参加を尊重、併せて、状況を見つつ「ポートフォリオ基準」も視野に

このような長所と短所を勘案し、次により補完的役割として新エネルギーを推進することとする。
・ 非化石・環境適合型・需給直結型エネルギーとして、その開発・普及が望ましく、政策的に推進する。
・ 開発・普及の初期段階(揺籃期−インキュベーター)においては、政府からの建設費補助が必要である。
・ これまで電力会社が自主的に行ってきた高値での買取は、効果があったものと認めるが、新エネが成長して市場で競争入札に参加し得るようになった段階では不必要と考える。法律による強制的買取義務や努力義務、是正勧告等は、本来、規制緩和・自由化の流れに逆行するものである。
・ 普及開発段階での1つの手法として、デンマークで2003年に実施を計画している「グリーン証書制度(Green Certificate) 」や、「ポートフォリオ基準(RPS) 」は、研究対象として挙げる価値がある。
・ 2000年10月から、我が国では「グリーン電力」制度が実施される。これは、法律による強制でも、政府からの規制でもなく、純粋に民間電力会社の創意によって設計されたもの。一般向けと企業向けの2種類がある。
・ 一般向けには、自然エネルギーの建設に浄財を投じようという家庭から500円/月程度を電気料金に上乗せして集め、参加者には「グリーンラベル」を渡す(玄関等に貼る)。電力会社も相応の拠出を行い「グリーンファンド」を形成、これにより割高な風力・太陽光の建設を行う。基金の一部は、全国融通を行うことにより、自然エネルギー開発に伴う地域間の不均衡の解消に寄与するものとする。
・ 企業向けは、自然エネルギーの普及を支援する意思を持った企業から、電気使用量の一定部分を風力と見なして割高な料金を集め、その代わりに「証明書」を発行。拠出金により、当該支援企業による独自の風力発電プロジェクトを成立させるものである。
・ こうした「グリーン電力」制度については、そのスキームの定着・拡大のため、一定の税制措置を考慮すべき、との意見もあった。
・ 大規模な風力プロジェクトに対しては、入札制度を実施し、市場原理を活用したコストダウンと、それによる一層の風力発電普及を図る。
・ この自主的な取組に対しては、一部の人々から批判がある。それは自主性だけでは効果が担保されないので、強制的な措置が不可欠というもの。確かに、スタート時点では効果は判らない。が、判らないからこそ、まず自主性を尊重したこのスキームを発動させ、併せて、状況を見つつ、例えばクレジットを伴う「非化石燃料ポートフォリオ基準」のような、更なるスキームについて検討したい。


(4)留意したい事項

・ 政策の対象となる「新エネルギー」の定義を明確にすること。
――「持続可能な利用が出来る再生可能エネルギーであって、これまでに広く実用化されていないもの」
――具体的には「太陽光発電」「太陽熱」「風力」「バイオマス」「小水力」等
・ 「太陽光宇宙発電(SPS)」「海洋温度差発電(OTEC) 」等の新技術は、研究開発の対象である。が、当面、普及政策としての「新エネルギー」の対象からは除く。
・ 「燃料電池」「コジェネレーション」等、エネルギーの新しい利用が(新エネルギー利用等促進法の政策支援対象として)重要なテーマであることは言うまでもない。これらは、化石燃料の効率的利用の観点から、引き続きその推進を図る。
・ 「廃棄物発電」「廃棄物熱利用」については、資源の有効利用、循環型社会形成の観点からも、その促進を図ることが重要である。また、「スーパーゴミ発電」「RDF 利用」等では、自治体と電力会社の一層の協調が望まれる。
・ 「バイオマスエネルギー」は、わが国では一般には注目度が低いものの、廃棄物・副産物などの「残さ系バイオマス」はかなりの量が潜在し、しかも低コスト、との指摘がある。また、EUでは「再生可能エネルギー」の主役として、バイオマスの熱利用が挙げられている。バイオマスの電気利用は高コストとしても、熱利用は有望というのが欧州での実態のようであるが、更に調査の上、わが国での可能性を追求する必要がある。

以 上

エネルギー総合政策小委員会・ここまでの経緯


日 時 場 所 議 題
第1回 4月20日 16:30-17:30 自民党本部704 「エネルギー総合政策の見直しについて」−事務局案説明
第2回 4月28日 8:00-9:00 自民党本部901 十市勉・日本エネルギー経済研究所理事よりヒアリング
第3回 5月9日 8:00-9:00 自民党本部704 山地憲治:東京大学教授よりヒアリング
第4回 5月16日 8:00-9:00 自民党本部704 茅陽一・慶應義塾大学教授よりヒアリング
第5回 5月23日 8:00-9:00 自民党本部704 石油連盟・電事連・日本ガス協会よりヒアリング
第6回 5月23日 12:00-13:00 自民党本部702 第一回中間取りまとめ案論議
第7回 5月24日 8:30-9:30 自民党本部704 第一回中間取りまとめ案決議
第8回 7月31日 11:45-12:45 自民党本部702 第一回中間取りまとめの課題について・総合エネルギー調査会の経過報告について・石油審議会報告について
第9回 8月2 11:45-12:45 自民党本部702 柏木孝夫:東京農工大学院教授・電事連よりヒアリング
第10回 8月3 11:45-12:45 自民党本部702 通産省・環境庁よりヒアリング
第11回 8月4 11:45-12:45 自民党本部702 森嶌昭夫:上智大学教授よりヒアリング
第12回 8月8 11:45-12:45 自民党本部702 論点整理
第13回 8月9 11:45-12:45 自民党本部702 第二回中間取りまとめ決議




<エネルギー総合政策小委員会>

   日 時:2000年8月3日(木)11:45-12:55
   場 所:自民党本部702号室

 加納議員発言要旨



※環境税に関して

加納:スウェーデンの炭素税は若干違うのではないか。私の記憶では、確かに87年から94年までの比較では削減したが、1991年炭素税導入後、1994年までは削減ではなく増加しているはず。それをもってして効果有りと言うかどうか。

加納:通産省に質問。二酸化炭素抑制効果のところで、経済主体が、より環境負荷の低い燃料へ転換を行う、とある。転換するとなるとrenewableを意味するのか。その場合、大規模水力は除かれるのか。また環境負荷の低い燃料といえば原子力も含まれるはず。いわゆる「非化石エネルギーを選択すべき」との解釈で宜しいか。

もう一点は環境庁に。二重の配当とあったが、社会保障はそもそも一般財源でやるべきであるが、実際、欧州では環境税を一般財源扱いにする傾向。そもそも炭素削減の目的ではどの程度使われているのか。

加納:欧州では石炭等非課税の場合が多い。恐らく原料炭。鉄鋼精錬用のコークス、石油化学精錬用のナフサ、これらは産業競争力維持のために非課税措置としているが、炭素税本来の目的を考えれば、CO2排出抑制が目的である以上、例外なく広く負担を求めるべき。本当に炭素を減らすならば全員参加が原則だと思うが如何。