加納:今日はお目にかかれて嬉しい。
フェル:私は研究政策、特にエネルギー政策を中心に行っている。
又、再生可能エネルギーに関する立法化も現在検討している。
加納:今回の合意は成功とお考えか。
フェル:様々な意見があるが、反原発を強力に推進する一派としては、極めて不充分 な 合意と言わざるを得ない。一方、電力会社や保守的な政治家にとっては、極めて納得
できる合意だ。個人的な見解だが、原発廃止を推進してきた立場としては、良い妥協 策だと思っている。
その理由は、電力会社に強制することなく、一定の見通しを持た せてフェードアウトさせるスキームを構築できたこと。原発は今だに国から優遇措置 を受けており、国民生活に根付いた行動を採っているとは言い難い。例えば、事故が
発生しても、保険による補償は実際の損害額に見合ったものではない。放射性廃棄物 処理に関しては700億マルクをも準備する必要があるが、その積立は非課税措置だ。
こうした優遇措置を他産業に当てはめれば経済性は劇的に向上するはず。今回の合意 の具体的方策は今後議論するが、徐々にこうした優遇措置を見直す方向で検討した
い。
加納:徐々にフェードアウトすることが賢明な策、という発言と理解。が、緑の党の 「すぐに廃止」という主張から見ると、今回の合意との間に乖離が見られるが。その
点に関しては如何。
フェル:その通りだ。早急の廃止という主張であったが,経済に与える影響を考える と、 この合意は妥協であり、現状では好ましいものと考える。
加納:私が理解する限りでは、緑の党は「脱原発を標榜」していた以上、今回の合意 により、時間はかかるにせよ、党としての使命を一つクリアしたと考えるが,次の目
標は?
フェル:緑の党の今後の目標は代替エネルギーの開発だ。再生可能エネルギーを推進 す ることだ。
加納:私も再生可能エネルギーを推進する立場であることを申し上げたい。再生可能 エネルギーと共に、原子力が必要という点がフェル議員と異なるかもしれないが。
フェル:先にトルコで「原子力を何故廃止するのか」という講演を行い、評価された の でその英文版をお渡ししたい。
加納:是非お見せ頂きたい。さて、先ほど「原子力は危険」とおっしゃったが、私の
理解ではドイツの原子力技術水準は非常に高い。今回の合意では「妨害無き運転」と なっているがその点については如何お考えか。
フェル:確かに技術水準は世界最高であろうが,原子力に関しては最高であったとし ても それでは不充分。放射性廃棄物処理の方法が未解決であることも問題。
加納:連邦政府は「バックエンドは保証する」と明定しているが如何お考えか。
フェル:最終処分場はまだ確保されていない。2005年6月末までは再処理を行うが,そ れ
以降は直接処分。ゴアレーベンについてはモラトリアムの対象となり、今後は他の地 域を探すことになる。
加納:ドイツの場合,リサイクルとワンススルーの双方を検討することになるが、ガ ラス固化体ならば岩塩層は最適と考えるが如何。私は本年初頭、米国カールズバッド
の岩塩層を視察したが、既にTRU廃棄物処分を開始しており、安全に操業させてい る。地元住民にも受容されている。
フェル:時間的なスケールとして20年で良ければ岩塩層で問題あるまい。が、それ以 上 では岩塩層とて問題は多い。事実、ゴアレーベンの場合は透水が発見されている。米
国は1,000年以上もの間、透水を防げると考えているのか。一方、遠い将来に使用済 み燃料を取り出す可能性のあるワンススルーの場合、岩塩層では難しい。温度変化に
より形状変化を伴うことになるからだ。
加納:フィンランドのオルキルオトの最終処分場決定はどのように考えるか。
フェル:(それは知らない、といった表情で)研究したい。 加納:コンラッドについては如何。
フェル:10年間モラトリアムだ。中低レベル廃棄物であるが、現在研究結果を調査し て いるところ。最終処分場はどのようにあるべきかを科学的に追求したい。花崗岩がい
いのか、水晶がいいのか、全てを検討したい。逆に日本について伺いたい。東海村事 故以降、原子力への反対意見が高まっていると聞いているが。
加納:反対意見があるのは事実であるが,その数は少数。先の衆院選挙でも、原子力 反対を標榜した議員も落選している。JCO事故以降、原子力のリスクと便益を述べる
と共に、そのリスクをいかにコントロールするかを提唱してきた。政治家である以 上、立法措置も行った。確かに反対意見もあるが、新規原発建設も13基程度目途が
たっているのも現実だ。必ずしも逆風ではない。 ところで、日/ユーラトム間で協定締結に関する交渉が行われているはずだが、一部 ドイツ政治家に「交渉をやめるべきだ」との意見もあると聞いた。緑の党としては如
何お考えか。
フェル:個人的見解であるが、日/ユーラトム協定締結は時代遅れだと思っている。
今後 は再生可能エネルギーの条約が必要だと思っている。
加納:日/ユーラトム交渉を止めるべきとのご意見か。
フェル:新しい原子炉を作る研究をすべきではない。ドイツの原子炉研究技術を海外 に 移転すべきである(注:意味不明)。
加納:私は原子力の分散型炉、即ち、小型で静的な原子炉開発を行うべきと考えてい る。核不拡散上有益であり、それを発展途上国に提供することが、ある意味では原子
力先進国の責務だと考えている。
フェル:原子力は不要だと思っている。再生可能エネルギーは無尽蔵だ。平和利用と 軍 事利用を完全に分離することは不可能である。それに原子力は高コストだ。ブラジル
でドイツの原子力技術協力の下、原子炉を建設したが160億マルクかかってしまっ た。更に、ウランの埋蔵量は制限されている。40年位で枯渇するのではないか。プル
トニウムを利用する高速増殖炉は世界各地で頓挫した。
加納:原子力に事故・核兵器拡散・廃棄物処理のリスクがあることは否定しないが、 メリットも沢山ある。例えば石油依存度を引き下げた、エネルギーセキュリティ向上
に貢献した、経済性が高い、温室効果ガスを発生させない等々。経済性が無ければ、 民間会社は13基も作ろうとはしないだろう。この議論を進めていけば一晩以上かかる
であろうが(笑い)。 再生可能エネルギーの議論に移りたい。再生可能エネルギーの強みと弱みはどこにあ るとお考えか。
フェル:弱みはたった一つだ。それも中期的には克服できるが、工業生産に転換する に はコスト高であることだ。長所は沢山ある。二酸化炭素を放出しない。放射線が出な
い。エネルギー密度が低いのは短所であるが、分散型電源として活用できる。高圧線 による送電も不要だし、原油輸送・核燃料輸送の必要も無い。多くの中小企業も参画
できる。従って雇用の創出に繋がる。化石燃料は埋蔵量に限りがあり、今後も資源を 巡っての戦いが頻発するであろうが、再生可能エネルギーであればそういった戦いは
あり得ない。再生可能エネルギーの資源は地球上に無尽蔵だ。加えて、将来の目標と しては省エネ推進だ。発電時の廃熱を再利用するコジェネの推進も重要。
加納:再生可能エネルギーの定義は?私の理解では風力・太陽光・バイオマス・小水 力・地熱と考えるが。大規模水力を含めているのか。
フェル:私の定義と同じだ。が、大規模水力は入っている。
加納:ドイツの大規模水力の一次エネルギーに占める割合はどの程度か。将来はどの ように推移するか。
フェル:はっきり覚えていない。がかなり高いと思う… 加納:再生可能エネルギーを増やす手立てを伺いたい。具体的にはどのような計画で
行うのか。
フェル:一次エネルギー比で4%なのを2010年までに倍増させる。これはEUとしての 目 標値だ。ここに試案がある。2020年には原子力を全てフェードアウトさせ、2050年に
は全一次エネルギーを再生可能エネルギーで賄うという画期的なものだ。 加納:これは誰の試案か? EU全体か?ドイツのみか?
フェル:勿論EU全体としてだ。
加納:2020年までにフランスが全廃するとは思えないが、誰が作成したのか。ドイツ 政府? それとも緑の党か。
フェル:ユーロソーラーというNGOが作成した。私を含め、緑の党の議員も一部参画 して いる。
加納:これは公式表明か?authorizeされたものか。 フェル:いや違う…(しばし沈黙) あくまで私案だ。EUが決定した目標は再生可能
エ ネルギーを2010年までに8%まで引き上げることだけだ… 加納:これから原子力法改正を行うと伺ったが,この審査には連邦参議院も参画する のか?(注:連邦参議院では、連立与党は過半数割れで苦境に立たされている)
フェル:未定だ。我々としては連邦議会のみで審議したいと考えている。 加納:ドイツの場合、国家全体の利害調整は連邦議会が行うが,各州の個別利害に絡
む問題は、連邦参議院の意向も十分考慮すると認識している。
フェル:その通りだ。新エネ法制定の際、「連邦参議院は賛否表明の義務無し」との 条 項を設けたが、連邦参議院よりクレームをついたことがある。今回の原子力法改正
も、どうなるかわからない。が、連立与党としては、連邦参議院の審議は不要との立 場は崩さない。 加納:本日は御礼申し上げる。原子力については賛否が分かれたものの、新エネ,省
エネの重要性では見解の一致を見たと思っている。訪日の際は、議員会館にもお立ち 寄りいただきたい。
フェル:こちらこそわざわざの訪問を心より歓迎申し上げる。まだ理論的に煮詰まっ て いない点は多いが、今後とも情報交換をさせていただきたい。
以 上
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